
人の小腸の消化酵素で分解されにくく、大腸まで届くことから「難消化性」と呼ばれます。水に溶けやすく、味やにおいのくせが少なく、粘り気も低いため、飲料をはじめ幅広い食品に使われています。
この記事では、名前の意味、原料と作り方、通常のデキストリンや他の食物繊維との違い、食品に使われる理由、摂るときの考え方を順に整理します。
なお、ここで扱う性質や数値は、公的機関の資料や、素材を開発・販売する企業の説明で確認できる範囲に限っています。
難消化性デキストリンは「消化されにくいデキストリン」で、分類上は水溶性食物繊維です。低粘性で溶けやすく、無色透明・低甘味といった扱いやすい性質があるため、飲料などに使いやすい素材です。ただし、製品ごとに配合量や表示が違うため、パッケージの表示で確認することが大切です。
YouTube動画でも解説していますので参考にしてみてくださいね!

監修者
銀座アイグラッドクリニック 院長
乾 雅人(紹介ページ)
2010年、東京大学医学部卒業。同大学附属病院で初期臨床研修、外科専門研修を修了。同大学大学院では外科学(呼吸器外科)を専攻し、肺移植領域の研究に従事。2020年、銀座アイグラッドクリニックを開業。臨床行為に従事する傍ら、医療コンサルティング会社も経営。総合病院や製薬会社、保険会社、会計事務所などの業務を補佐し、医療の社会問題化と向き合っている。NMNの上位互換である5デアザフラビン(TND1128)臨床研究の第一人者でもあり、眠れる知財の普及に尽力している。
難消化性デキストリンとは?名前の意味から整理

名前は「難消化性」と「デキストリン」に分けると理解しやすくなります。
デキストリンは、でん粉を酸・酵素・加熱などで部分的に加水分解して得られる多糖類です。でん粉と同じくグルコース(ブドウ糖)から構成されています。
そこに「難消化性」が付くのは、通常のデキストリンと違って人の消化酵素で分解されにくいためです。難消化性デキストリンは、平均分子量が2000程度のグルカンで、水溶性食物繊維に分類されます。
何から、どのように作られるのか
原料はトウモロコシのでん粉が代表的です。
農畜産業振興機構が掲載する松谷化学工業の「ファイバーソル2」の製法では、トウモロコシでん粉に微量の塩酸を加えて加熱し、焙焼デキストリンを作ります。
これをα-アミラーゼとグルコアミラーゼで加水分解し、脱色・脱塩などの精製を行い、クロマト分画で食物繊維の部分を分取します。
このようにして得られた「ファイバーソル2」は、酵素-HPLC法の分析で食物繊維を85~95%含みます。これは当該素材の数値で、すべての難消化性デキストリン製品に当てはまる値とは限りません。
大塚製薬の説明でも、トウモロコシのデンプンを焙焼し、アミラーゼで加水分解したうえで、難消化性の成分を取り出して調製した水溶性食物繊維が難消化性デキストリンとされています。
なぜ消化されにくいのか:通常のデキストリンとの違い
通常のでん粉やデキストリンは、唾液や膵液のα-アミラーゼなどで分解され、小腸でグルコースまで分解されて吸収されます。
一方、難消化性デキストリンは、焙焼の過程でグルコースの結合が組み替わり、複雑な枝分かれ構造になっています。ヒトの消化酵素で分解されにくい結合や構造を含むため、小腸での消化をすり抜けて大腸へ進みます。
数値で示すと、経口摂取した難消化性デキストリンの約90%は小腸で消化吸収を免れて大腸に到達し、約半分が腸内細菌に利用され、残りは糞便とともに排出されるとされています(ファイバーソル2についての記述)。
食物繊維とはどう違う?水溶性・不溶性の中での位置づけ

食物繊維は、日本食品標準成分表で「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されています。
野菜や穀物に含まれるものだけでなく、難消化性のでん粉やデキストリン、難消化性オリゴ糖も含まれます。
食物繊維には水に溶ける水溶性と溶けない不溶性があり、難消化性デキストリンは水に溶けやすい水溶性食物繊維です。
同じ水溶性でもグアガムやβ-グルカンは水に溶けると粘性が高くなりますが、難消化性デキストリンの水溶液は低粘度という違いがあります。
| 用語 | 意味 | 難消化性デキストリンとの関係 |
|---|---|---|
| でん粉 | グルコースが多数つながった多糖類。アミロースとアミロペクチンからなる | 原料 |
| デキストリン | でん粉を部分的に加水分解して得られる多糖類 | 仲間(難消化性デキストリンもDE20以下のマルトデキストリンの仲間) |
| 食物繊維 | ヒトの消化酵素で消化されにくい成分の総体 | 難消化性デキストリンはその一種 |
| 水溶性食物繊維 | 水に溶けるタイプの食物繊維 | 難消化性デキストリンが該当 |
食品や飲料に使われる理由

使われる理由は、大きく物性の扱いやすさにあります。
難消化性デキストリンは水に溶けやすく、水溶液は透明で低粘性、異臭味がなく、甘味は砂糖の10分の1程度とわずかです。冷蔵・冷凍や長時間の水溶液保存でも濁りや沈殿が生じにくいとされています。
さらに酸性条件でもほとんど変化せず、レトルト処理でも分解されず安定とされています。
用途の3つの方向
農畜産業振興機構に掲載された解説では、難消化性デキストリンを使った商品開発が「食物繊維素材として」「物性を利用して」「生理機能を利用して」の3つに分類されています。
- 食物繊維素材として:食物繊維を85~95%含むため、食物繊維入りの食品づくりに使える。
- 物性を利用して:脂肪に似たテクスチャーを生かして低カロリー化に使われたり、高甘味度甘味料の後味を和らげたり、コラーゲンペプチドの風味のマスキングに使われたりする例がある。
- 生理機能を利用して:特定保健用食品や機能性表示食品の関与成分・機能性関与成分として使われる。

どんな食品に含まれていることが多いか
代表例は特定保健用食品の飲料です。
消費者庁の許可一覧(2017年12月現在)によれば、難消化性デキストリンを関与成分とする特定保健用食品は再許可なども含め379品目で、そのうち飲料関係が297品目でした。
低粘性で飲料に向くことが背景にあるとされています。これは2017年時点の数字なので、現在の品目数とは異なる可能性があります。
このほか、アイスクリーム、カレールウ、ソーセージなどで脂肪代替の目的に使える例や、糖質ゼロをうたうアルコール飲料の設計に使える例が挙げられています。
実際にどの商品に入っているかは、商品ごとの原材料表示や栄養成分表示で確かめるのが確実です。
エネルギー値と表示制度の基本

特定保健用食品は、製品ごとに有効性と安全性の審査を受けて表示が許可される制度です。
一方、機能性表示食品は、国が安全性と機能性の審査は行わず、根拠情報を事業者が販売前に消費者庁へ届け出て受理されると機能性を表示できる制度です。
同じ成分を使っていても、制度によって表示の位置づけが異なります。
安全性と摂るときの考え方
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、食物繊維の目標量が成人男性で1日20g以上、女性で18g以上です。
令和6年国民健康・栄養調査では、20歳以上の平均摂取量は1日18.1gでした。
難消化性デキストリンを含む食品は食物繊維を補う手段のひとつですが、野菜、穀類、豆類、きのこ、海藻などの食事全体で摂ることが基本です。
購入前に確認したい表示のポイント
- 原材料名に「難消化性デキストリン(食物繊維)」などの記載があるかを見る。
- 栄養成分表示で、食物繊維の量と、1食(1本・1包)当たりの量を確認する。
- 特定保健用食品か機能性表示食品かを確認し、表示されている内容と摂取目安量を読む。
- 飲料は100mL当たりか1本当たりかなど、表示の単位をそろえて比べる。
- 体調に不安がある場合は、少量から始め、気になる症状があれば量を見直す。
よくある疑問
まとめ
難消化性デキストリンは、でん粉を加熱と酵素処理、精製して得られる、消化されにくい水溶性食物繊維です。
溶けやすく低粘性で、無色透明・低甘味といった性質から、飲料をはじめ多くの食品に使われています。
購入時は、原材料表示と栄養成分表示で食物繊維の量や摂取目安を確認し、体調に合わせて無理なく取り入れるのがよいでしょう。食事全体で食物繊維を補う視点も大切です。
