
セラミドは、皮膚のいちばん外側にある「角層(角質層)」に多く存在する脂質の一種です。
この記事では、セラミドが何なのか、肌のどこにあるのか、不足するとどういう状態を指すのかを、用語の意味から順にたどります。
セラミドとは?まず押さえたい基本

セラミドは脂質の一種です。脂質というと油や脂肪のイメージが強いかもしれませんが、脂質には水に溶けない性質を活かして、物質を通さない「バリア」として働く役割もあります。
もう少し化学的に言うと、セラミドは「スフィンゴ脂質」という特殊な脂質の一つで、細胞間脂質の多くを占めます。スフィンゴシン骨格を持つ分子種の一群をセラミドと呼ぶ、という定義もあります。
初心者がつまずきやすいのは、「セラミド」が一つの物質の名前ではなく、似た構造をもつ分子の仲間の総称だという点です。
実際、天然のセラミドは、構成する糖や脂肪酸の種類・組み合わせによって、さまざまなセラミドの集合体として存在します。
セラミドは肌のどこにある?角層と細胞間脂質
角層は肌のいちばん外側

皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織に分かれます。表皮はさらに外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層に分けられ、セラミドが特に多いのは最も外側の角質層です。
レンガとセメントのたとえ

角層の構造は「レンガ塀」にたとえられます。
角層細胞がレンガ、細胞間脂質がレンガ同士のあいだを埋めるセメントです。セラミドは、このセメントにあたる細胞間脂質の主な成分です。
レンガの内側には、アミノ酸などでできた天然保湿因子(NMF)があり、水分を抱え込むスポンジのように働くと説明されています。
セラミドの2つの働き:水分保持とバリア
水分を挟み込むラメラ構造

セラミドは脂質でありながら、水となじみやすい「親水基」という部分を化学構造に持っています。
そのため水の分子と一緒に、「セラミド・水・セラミド・水」と交互に重なるサンドイッチ状の層状構造(ラメラ構造)をつくれます。
刺激の侵入と水分の蒸散を防ぐバリア機能

セラミドは他の細胞間脂質とともに、角層細胞のあいだをセメントのように埋めています。これにより、外部からの刺激物質の侵入や、体内の水分の過剰な蒸散を防ぎます。
保湿は「水分をためる」働き、バリアは「出入りを防ぐ」働きです。セラミドを含む細胞間脂質は、水分を層の間に挟み込みつつ、すき間を埋めて出入りも抑える、という両方に関わります。
セラミドが不足するとはどういう状態?

セラミドが不足した肌では、層状構造のなかに水をつなぎとめられず、肌の水分が少なくなって乾燥しがちになると説明されています。レンガ塀のたとえでは、セメントがスカスカになって、すきま風が吹き、中の水分が逃げやすくなった状態です。
ここで言う「不足」は、角層のセラミドが少なく、層状構造やバリアが十分に保てない状態を指す言葉です。
自分の肌のセラミド量が足りているかどうかは見た目だけでは判断できません。肌の不調が続く場合は、成分の話にとどまらず、皮膚科など専門機関への相談を検討してください。
セラミドには種類がある:アシルセラミドとは
セラミドにはさまざまな種類があります。その中のアシルセラミドは、皮膚バリア形成に特化した「バリア脂質」とされ、角層の脂質多層構造(脂質ラメラ)をつくるために必要とされています。
構造の違いとして、通常のセラミドが2本の炭化水素鎖(長鎖塩基1本と脂肪酸1本)を持つのに対し、アシルセラミドは3本(長鎖塩基1本と脂肪酸2本)からなる複雑な構造です。そのため、体内でつくるにはより多くの化学反応と酵素が必要になります。
公的研究機関の発表では、アシルセラミドの合成に関わる酵素PNPLA1や、FATP4遺伝子の働きが、動物実験などを通じて明らかにされています。
たとえばPNPLA1を欠いたマウスでは、皮膚からの水分喪失が起こり、角質細胞間脂質が失われていました。
これらは皮膚バリアにセラミドが重要であることを示す基礎研究であり、一般的なスキンケア製品の使い方を直接示すものではありません。
| 項目 | 通常のセラミド | アシルセラミド |
|---|---|---|
| 炭化水素鎖の本数 | 2本 | 3本 |
| 内訳 | 長鎖塩基1本と脂肪酸1本 | 長鎖塩基1本と脂肪酸2本 |
| 皮膚での位置づけ | セラミドの一種 | 皮膚バリア形成に特化したバリア脂質 |
セラミドの由来と化粧品・食品の原料

セラミドは皮膚に含まれる保湿成分で、化粧品や機能性食品の原料として利用されています。
産業的には、かつては牛脳が主な供給源でしたが、BSE問題により、現在は植物由来のものが主流とされています。米、小麦、トウモロコシ、大豆、コンニャク、甜菜などの穀類や、キノコ類、牛乳などから製造されています。
原料としてのセラミドの純度についても触れておきます。2014年の農研機構の発表時点では、市場に供給されているセラミドは含有量5〜10%程度のものが主流で、セラミド以外の成分が多く含まれ、色や臭いが出る場合があると説明されています。
同機構は米ぬかから95%以上の高純度セラミドを連続生産する技術を開発したと発表しました。現在の市場の状況は発表時点から変わっている可能性があるため、数字は当時の情報として受け取ってください。
また、セラミドは水や油に溶けにくく、化粧品に混ぜ合わせるのが難しい成分でもあります。
そのため、セラミドと同じような働きをするとされるアミノ酸ベースの原料として、味の素社の「エルデュウ®(ELDEW®)」のような化粧品原料も開発されています。これは同社の原料についての説明であり、セラミドそのものとは別の原料です。
セラミドと皮膚の病気の関係は?
公的研究機関の発表では、アシルセラミドの生合成や代謝が乱れると皮膚バリア機能が損なわれ、魚鱗癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患に関わると説明されています。また、アトピー性皮膚炎の患者さんでは、魚鱗癬ほどではないものの皮膚バリア機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすくなっているとされています。
ただし、これらは研究の背景として述べられた内容です。肌の乾燥や炎症が気になる場合に、セラミドを含む製品を使えば解決するとは言えません。
症状が続くときや強い炎症があるときは、自己判断でスキンケアだけに頼らず、医療機関で相談することが大切です。
セラミドを知るうえでのよくある疑問
まとめ
- セラミドは脂質の一種で、角層に多く存在する
- 角層細胞のあいだを埋める細胞間脂質の主成分で、レンガ塀のセメントにたとえられる
- 水と交互に重なるラメラ構造で水分保持を支え、刺激の侵入や水分蒸散を防ぐバリア機能に関わる
- 種類があり、アシルセラミドは皮膚バリア形成に特化した脂質とされる
- 化粧品や食品の原料は植物由来が主流で、純度や成分は製品ごとに異なる
セラミドは、肌のうるおいとバリアを支える角層の重要な構成成分です。成分の基本を知っておくと、製品を選ぶときも表示や説明を落ち着いて読めるようになります。
肌トラブルが続く場合は、成分選びだけで解決しようとせず、専門家への相談も考えてみてください。
